-2008年8月31日 ガソリンズ@秋葉原PAGODA LIVE Review- 「拳ひとつぶんの」 writer;小山由香 |
その日のオープニングSEは、ザ・クロマニヨンズの『エイトビート』。 ガソリンズの代表曲と同タイトル、そして同じ方向性を持つ一曲だ。 しかも、その日ガソリンズの一曲目もまた『エイトビート』。(・・・自らかぶせてきたか) 彼らの無謀さには、頭が下がる思いだ。 ガソリンズは、プロじゃない。大手のインディーバンドというわけでもない。 だけど、心臓の音に、目に見えるものに、感じるもの全てに対して忠実にロックンロールをやっている。 誰の胸にも鳴り響く鼓動のように、ガソリンズにはガソリンズのエイトビートがある。 人は人、それもまた尊重するし、僕たちもまた、僕たちなんだ。ただそれだけだよ、と・・・勝手な妄想だけど・・・ でも、かえちんがそう言って笑っているような気がして、あたしはなんだか苦笑する。 『エイトビート』に続いて『ガソリンズのテーマ』・・・どうやら、選曲の大胆さはSEにとどまらないらしい。 爆発力のある定番曲は、ライヴの最後に・・・なんていつのまにか作ってしまった手のかからないルールを、奴らはぶっ壊してきた。 体力的にもハードなセットリストだ。 『ホテル・ロマンス』の狂おしさを、赤いライトがなぞりあげてゆく。 ひたすらに削りつづけるベースが、無我夢中で腰を振る壊れた男を連想させる。 ・・・そういえば、少年のようだったナカニシが、メンバーチェンジ後から、急に男に見えてきた。 むしろ、時を同じくして「どこまでも女」だったかえちんが「少年」になったように感じる。 かえちんが「少年」を引き受けたぶん、ナカニシが「雄」に徹することができたのだろうか。 何にせよ、この二人の変貌とタイガーのドラムが、現在のガソリンズを作り上げているのだ。 泥臭い、だけど鬱々とした重苦しさもない。ただ、塊の音。 そう、メンバーチェンジ後のガソリンズは、あの以前見せたような、鬼気迫る心の闇さえも突き抜けているのだ。 ただ純粋に、ひたむきに、人間が勝負している。 『裏切った。』などに象徴されるドロドロとした精神の葛藤みたいなものを、血反吐を吐くようにブチ放ってきたガソリンズはもう過去の姿で、 今ここにいるガソリンズは、もっと鋭くて無駄がない、純粋な力をもっている。 逆にいえば、「それ」だけ・・・ つまり、ロックンロールと奴らが呼んでいるそのひたむきな姿勢以外、今のガソリンズにはもう、「本当になんにもない」。 ゆえに、純粋さを増した印象を受けるのだ。 今時のロックバンドが機械を操り、サイボーグじみた破壊力で聴衆を攻撃する。それはそれで、おもしろいものだけれど。 ガソリンズのステージの後には、綺麗に、人間の拳ひとつぶんの穴しか残らない。 パワー不足? バカ言え、人ひとりが「本気」になった時の力は、想像よりずっと強く、リアルに痛いものなんだ。 (2008.09.21 記) |